約 514,077 件
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/77.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-5話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18372350
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/78.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-6話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18533993
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/76.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-4話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18320704
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1840.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ インターミッション07:おしまいの日 彼女が只一つミスを犯したとすれば、それはその時だけに違いない。 ◆ (最近は真紀の調子も良いみたいだし、神姫の開発も上手く言っている。……言うこと無しね……) 今にもスキップしそうな足取りで京子は階段を上る。 京子も参加して設計された“武装神姫”、アーンヴァル。 そして正反対のコンセプトで設計されたストラーフ。 Kemotech社サイドでも格闘特化型と汎用型の神姫がロールアウトし、それぞれ『マオチャオ』、『ハウリン』と名づけられた。 武装開発に協力したVulcan Lab社も独自にヴァッフェバニーと名づけられた神姫を開発し、5機種同時販売が決定されている。 狙撃タイプ2機種や植物型、鳥型等のトライアルに敗れたタイプも、この後に参入する企業へ開発ベースとして提供される方針で話がついた。 テストが全て終わったカトレアのマスターとなった少年が開発した、筐体システムも予定以上の性能の獲得に成功しており、全く新しい事業の滑り出しとしてはこれ以上無い状況であると言えるだろう。 (ふふふ。真紀が聞いたら喜ぶかしら?) 夜中なので足音を殺しながら、京子は病院の廊下を急ぐ。 「?」 そして、京子は足を止める。 501号室。 土方真紀の病室の戸が、ほんの僅かに開いており、そこから、室内の光と声が漏れていた。 それに気付き、足を止めたが故に。 真紀が京子に気付くことは無く。 京子は、それを―――。 聞いてしまった。 『私の名は土方真紀。CSCを製作し、全てのMMSの心を作った存在です―――』 (……真紀?) 『―――ですが、私が作ったのは人のパートナーとしての存在。……決して、戦う為の神姫ではありません―――』 (―――!?) 『―――ゆえに、私は全ての神姫を否定し、これを破壊します―――』 「………ぇ?」 『―――その為に、全ての神姫の中枢たるCSCに、私はウイルスを仕込みました。このウイルスは“とある場所”にあるメインコンピューターからの指示で一斉に活性化し、全ての神姫を死に至らしめるでしょう―――』 (CSCにウイルス?) 製品用にCSCがバージョンアップし、Ver1.1に更新されたのは、他ならぬ真紀の提案によるもの。 そして勿論。それを行ったのも真紀本人だった。 『―――あなた方の中には、闘いを通じて神姫との――――――』 京子は、一歩、二歩と後ずさる。 (真紀が? どうして? ……人のパートナー……? 神姫を、破壊する?) 逃げるように。 京子は廊下から走り去った。 ◆ 「……けふっ、くふっ!!」 胸を押さえて真紀が身を捩る。 「主っ!!」 「……大、丈夫」 真紀はそう言って、その身を案じる“彼女”に手を翳す。 (……後、10時間位……) それが、彼女に遺された時間だった。 (……姉さん……) 扉は未だ開かない。 京子は、未だ戻らない。 「……ごめんね、姉さん」 真紀は、もう京子に会えないことを何となく、理解していた……。 「主、これ以上はお体に障ります。一先ず休まれては……?」 「ダメ。今寝たら、もう起きられない……」 「……主」 心を持つ『神姫』であるが故に、“彼女”は真紀の、主の死期を悟ってしまった。 「……最後まで終わらせよう。……私に出来る最期の事だから……」 「………………………はい、主」 10秒と言う葛藤の時間は、『神姫』である“彼女”にとって長いのか、短いのか……。 だがしかし、結局は頷くしかないのだ。 そして。 「―――、貴女に最後の命令を下します」 真紀は“彼女”の名を呼び……。 「メインコンピュータを守り、そこを訪れる全ての神姫を倒しなさい!!」 最期の使命を与えた。 ◆ 翌日、土方真紀が死んだ事を、京子は病院からの電話で知った。 インターミッション08:天使は滅びの笛を吹くにつづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る アーリヤ無ぇ(怒)!! 地元、池袋、秋葉原、合計20以上のプラモ取扱店を巡りましたがアーリヤは発見できず。 この間まで何度か見かけてたのに(泣)。 悔しいのでナインボールを買って来た。 ……予想の遥か上を行く出来でビックリだった。 最近のプラモマジすげぇ。 うぅっ、ナインボールでこんなに凄いなら、アーリヤはどれだけ……。 再入荷は何時なのでしょうか? ついでに発見したBLOODALONEの5巻を読んで悲しみを癒す今日この頃。 GWも仕事です(泣)。 ALCでした。 -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/627.html
「マスターじゃない!!『お兄ちゃん』だっっっ!!!」 しばし沈黙。その後にハウリンは口を開く。 「…お、お兄ちゃん…ですか…?」 「そう、お兄ちゃん」 またしばし沈黙。 「マスターでは…ないのですか…?」 「マスターだけどお兄ちゃん」 そして、またしばしry 「で…では、マスターはあなたでいいんですよね?そして呼称はお兄ちゃん、と?」 「うん、そういうこと! あー、あと名前だよな。ちゃんと考えといたんだ、『ぽち』!どうだ、いいだろ!」 「ぽ、ぽちですか、犬のような名前ですね…」 「もしかして、いやだったか…?」 俺が不安そうに聞く。 「そんなことないです!マス…お、お兄ちゃんが付けてくれた名前だからうれしいです!これからよろしくお願いしますね、…お兄ちゃん」 「そっか!ならよかった!よろしくな!」 いや、しかしこいつは思った以上に可愛い。顔赤くして「お兄ちゃん」は反則だろう。まぁ、俺が呼ばせてるわけだけども。 と、そんなことを考えていると。 ―ピンポーン 「こんちわー、佐川急便でーす」 本日二度目の宅配便。俺は何が届いたか、わかっていた。 「お、ぽち、妹が来たぞ!おいで!」 そう言ってぽちに手を差出しつつベッドの上に置いてあった財布を掴む。 「妹?…ですか?」 ぽちは不思議そうな顔をしながら首を傾げている。うん、可愛い。 ぽちを手に乗せ、俺はまた玄関に向かった。 さて、また段ボール箱が一つ。今度の箱には「武装神姫・マオチャオ」と書かれている。 「マ…お兄ちゃん、もしかして妹とはこのマオチャオタイプのことですか?」 箱の上に移動したぽちが聞いてくる。 「お、さすが察しがいいね。そう、こいつがおまえの妹だ!ぽちの妹にするためにわざわざ配送時間をずらして指定したというわけよ。」 部屋につき、ぽちは床にひょいっと飛び降り、 「そ、そうなんですか。でもそれなら起動させる時間をずらせばよかっただけなのでは…?」 と的確なツッコミをくださった。 「言うな。俺も今そう思ったけど言うな。それより、早速起動させてやろうじゃないか。」 俺は誤魔化すように、箱を開封していく。 「おはよー!きみがますたー?なんだかちっちゃいねー!」 そう言ってぽちに話掛ける猫型MMSマオチャオ。天然ですかー? ぽちはなんだかびっくりと困ったが混ざったような顔をしている。 「いやいや、俺を無視しないで欲しいかなー、なんて」 こちらから声をかけてみる。 「おー、あなたがますたーだね!なんだか違うと思ったんだよー!で、で!なんて呼べばいい!?あとあと、名前ちょーだい!」 元気な子だなー。マオチャオってのはみんなこう元気なのか?そんなことを考えつつ、答える。 「よし、お前の名前は『たま』!俺のことは『兄ちゃん』だ!」 「おー!ねこみたいでかわいーねー!たまはたまだぁ!へへ、ありがと、兄ちゃん!よろしくね!」 たまはそう嬉しそうに言った。喜んでもらえて何より。 「あぁ、よろしく。ちなみにこっちがぽち。お前のお姉さんだ。」 そう紹介する。 「ぽちです。よろしくお願いしますね、たま」 「うん!よろしくね、姉ちゃん!」 「姉ちゃん…妹っていうのも悪くないですね。」 仲良くできそうで何より。これからの生活、楽しくなりそうだな。 つづきかねない
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2546.html
第2部 「ミッドナイトブルー」 第10話 「night-10」 巨大な航空母艦型MMSのツラギの姿がはっきりと眼前に写る。 ツラギは左舷に備え付けてある大小さまざまな火砲でシュヴァル目掛けて対空射撃を開始する。甲板にいる砲台型や悪魔型もライフルや大砲で攻撃を行う。 急降下するシュヴァルの周りで砲弾が炸裂し、機関砲弾が装甲を貫く、シュヴァルは満身創痍になりながらも最後の駄目押しで、リアパーツの2門の素粒子砲を放った。 シュヴァル「うおおおおお!!」 ビッシュウウウン!! 青白い光がまっすぐにツラギの後部のスクリュー、舵部分に命中する。 ズズウウン・・・ 一瞬、グラリとツラギの巨体がひるむが、さして目に見えるようなダメージは食らっていない。 金川「ツラギ!損傷報告」 ツラギのマスターである金川がマイクを掴んで確認を取る。 ツラギ「左舷後方に命中!第2舵が破損、被害は軽微」 ナターリャ「ふん、バカめ・・・その程度で空母型神姫が沈むものか!」 ドンドンドンドン!! ツラギの艦橋ブロックに搭載されている連装機関砲が放った機関砲弾がシュヴァルのエンジンを貫いた。 シュヴァル「ぐっあ・・・エ、エンジンが!」 ボウウン!! 真っ黒な煙を吐いて、シュヴァルの体がバランスを崩してツラギの甲板に突っ込む。ツラギの甲板に叩きつけられるように不時着するシュヴァル。 シュヴァル「ぐああああ!!」 不時着のショックでシュヴァルの装甲がバラバラに砕け散り、脚部があらぬ方向に曲がる。 ツラギ「敵機!甲板に落着!」 悪魔型のニパラが強化アームでシュヴァルの頭部を鷲掴みにし、頭部に砲口を突きつける砲台型のルーシ。 ニパラ「ひゃはははっは!!捕まえたぜェ!!」 ルーシ「よくも好き勝手散々暴れまくりやがって」 シュヴァル「う・・・・ぐ・・・」 ニパラ「頭部を握りつぶしてCSCを抉り出して砕いてやる」 ナターリャ「待て!!」 ナターリャが弱ったシュヴァルに近づくと、もったいぶった言い方であざ笑う。 ナターリャ「敵ながらたった一人で私の指揮する機動MMS艦隊にここまで立ち向かったのだ。ここは天晴れと賞賛すべきだろう」 シュヴァル「ぐ・・・・」 ニパラはぐいとシュヴァルの頭部を無理やりナターリャに向けさせる。 ニパラ「ナターリャ将軍、どうするつもりで?」 ルーシ「へっへへ、ネットで公開しましょうよー夜帝の装甲や武装をひん剥いて、二度とふざけたことが出来ないように辱しめてやるんだ」 戦闘爆撃機型のマレズが甲板に降りてシュヴァルに機関砲を向ける。 マレズ「ヒュー、こいつなんだかんだいってけっこう可愛い顔してんじゃねえか、へっへへ」 ナターリャ「よく頑張ったが、オマエのおおげさな伝説も今日までだ!!!何が夜帝だ!!ふざけるな・・・夜のステージなら最強?それも今日までだ!!いいか、ネットのみんなにこういうんだ『私は敗北主義者です。優秀なナターリャ将軍の指揮する機動MMS艦隊に敗れた惨めな敗北者です』とな!!」 ナターリャは興奮して唾を飛ばす。 ツラギは艦橋から惨めに羽交い絞めにされているシュヴァルを見てニヤニヤしている。 シュヴァルは顔をうなだれて、ひくひくと体を振るわせる。 マレズ「おいおい、どーしたァ?あまりに惨め過ぎて怯えてるのか?」 ニパラ「うひひひ、八つ裂きにしてバラバラに砕いてやるぜ」 ナターリャ「まずは許してくださいと喚いて、情けないサレンダー宣告をもらおうか!!私の負けですってな」 シュヴァルはぶつぶつと何かつぶやく シュヴァル「・・・か・・・め・・・」 ナターリャ「どうした、何か言いたいことがあるなら言ってみたまえ、最後だ。何を言ってもいいぞ」 ニパラがぐいっとシュヴァルの顎を掴んで顔を向けさせる。 シュヴァルの顔は硝煙で薄汚れていたが、目は爛々と黄金色に光り生気に満ち溢れていた。シュヴァルはニヤニヤと笑いながら口を開く。 シュヴァル「・・・チェスと将棋の違いって知っているか?」 マレズ「は?」 ニパラ「へ・・・なんだ?」 唐突にまったく意味の分からないことを言うシュヴァルに周りは下卑た笑いをやめる。 ルーシ「チェスと将棋の違いだとォ?」 ナターリャは真顔で答える。 ナターリャ「一般的にだが・・・大きな違いは、チェスは取った駒を使うことはできないが、将棋は取った駒を味方の駒として使うことが可能だが・・・それがどうした?」 シュヴァルはふっと顔を歪ませる。 シュヴァル「ナターリャ、あんたはチェスが得意なんだって?このゲームをチェスに見立てて、私を狩ったつもりになっているが、それは大きな間違いだ。負けたのはあんたの方だ」 ルーシ「てめえッ!!!何を分けわかんないこと言ってやがるんだ!!このヤロウ!!」 ルーシはライフルの銃底でシュヴァルの柔らかいお腹を殴りつける。 シュヴァル「がはっ」 ズン・・・ズズン・・・ 上空で低い爆発音が鳴り、甲板が徐々に赤く明るくなってくる。 ナターリャ「・・・・・」 ナターリャはあることに気がつき、ゆっくりと真上を見上げる。 シュヴァルとの戦闘で被弾し操舵不能に陥っていた重巡洋戦艦型MMSの「マキシマ」がゆっくりと炎に包まれ小規模な爆発を繰り返しながら一直線に自分たちがいる空母型のツラギに降下してくる。 野木「姿勢安定装置を作動しろ!」 マキシマ「スタビライザー全損!!こ、高度が維持できません!だ、ダメです!!堕ちます!!」 遠くから重巡洋戦艦型のヴィクトリアがチカチカと発光信号を送ってツラギに退避命令を出している。 ヴィクトリア「至急、進路変更サレタシ、両艦は衝突ス」 金川が発光信号を見てツラギに指示を出す。 金川「ツラギ、至急進路変更だ!!おもかじ!」 ツラギ「あう・・ああ・・・か、舵が聞きません!!さきほどの攻撃で舵がァ!!」 ツラギはパクパクと口を開けて恐怖に引きつった顔を晒す。 シュヴァル「あんたの駒、使わせてもらった。所詮あんたは駒を駒としか見てなかったんだ」 ナターリャ「!!」 ナターリャは目を見開き、落下してくるマキシマの燃え盛る巨体を凝視する。 ニパラ「あ・・・うあああ・・」 ルーシ「ひ、ひいい!!何をしているんだ!舵を切れ!!」 マレズ「ぶつかるぞ!」 燃え盛るマキシマは必死で発光信号を発する。 マキシマ「我、操舵不能、我、操舵不能」 シュヴァル「このゲームはおまえの負けだ。ナターリャ。武装神姫の戦いはチェスほど単純じゃない」 シュヴァルがフッと笑う。 ツラギ「そ、総員退艦ッーーー」 ヴイイイイーンヴィイイーーーーン・・・ サイレンを鳴らすツラギ。 マレズ「うわあああああ!!」 ルーシ「に、逃げろ!!!」 ニパラ「ぎゃあああああああああああ!!」 恐怖で叫び声を上げながら逃げようとする甲板にいる神姫たち。 ナターリャはシュヴァルに向かってパチパチと拍手をする。 ナターリャ「ハラショー!!!すばらしい!!これは私の負けだな、さすがは夜帝だ・・・私の得意分野であるチェスにも勝利した。完璧だ・・・君のような武装神姫と一緒に滅ぶことが出来るとはうれしいよ」 シュヴァルはちらりと燃え盛るマキシマを見てつぶやく。 シュヴァル「あんたは逃げないのかい」 ナターリャ「間に合うものか・・・」 ゴオゴゴゴオオオ・・・ 燃え盛る巨大なマキシマの船体は突き刺さるようにツラギの甲板に墜落し、ツラギの格納庫にまで突き刺さり、内部の燃料や弾薬庫に火が引火し、強烈な大爆発を起す。 グッワッツワアアアアアアアアアアアアアアアアアーーン!!! 真っ赤な炎で出来た巨大なキノコ雲がツラギから立ち上り、強烈な爆風を引き起こす。 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 撃破 □航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 撃破 □重巡洋戦艦型MMS 「マキシマ」 SSランク「ワルキューレ」 撃破 □悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク 撃破 □戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク 撃破 □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク 撃破 □夜間重戦闘機型「シュヴァル」 SSSランク 二つ名 「夜帝」 撃破 撃破のテロップが筐体に流れる。 呆然と大爆発を眺める、戦闘機型のアオイとツクヨミ。 アオイ「おい、俺たちの帰るところがなくなったぞ」 ツクヨミ「俺に言うなよアオイ」 重巡洋戦艦型のヴィクトリアがマスターの野木に報告する。 ヴィクトリア「マキシマ、ツラギと衝突し爆沈す、ツラギにのっていた神姫の生存はなし、ナターリャ将軍は爆死しました」 野木「つまり、このゲームの勝敗は?」 ヴィクトリア「敵の夜帝、シュヴァルの撃破を確認、されどこちらの指揮官であるナターリャ将軍が戦死されたので、この勝負は引き分けです」 野木「引き分け?冗談じゃない。私たちの負けだ。こちらは17体もの神姫がいたが、生き残ったのはお前を含めて3体のみ・・・奴は1個機動MMS艦隊を潰滅しやがった」 夜神はスーツから煙草を取り出し、火をつけて深く煙草の煙を吸い込む。 筐体の周りは真っ暗で煙草の火だけが赤く燃えている。 夜神「・・・・」 夜神は煙草についた赤い炎の灯火を、じっと見つめる。 じわじわと赤い明かりを失っていく煙草の火・・・・ 煙草の火が消えるとあたりは濃いブルーの闇に包まれる。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>第11話 「night-11」 前に戻る>第9話 「night-9」 トップページに戻る u
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/834.html
飛翔、上昇。空、加速加速加速。 黒いわたくしのウイングが、デジタルの空気を裂いて飛ぶ。ここは丘陵ステージ、飛行を妨げる遮蔽物の無いこの開けたステージは、わたくしのようなアーンヴァルタイプが最も得意とする領域。程無くして、対戦相手を視認する。フォートブラッグタイプ、セカンドランカーのフォトンさん。マスターによれば彼女は空を飛ぶ者の“天敵”らしいのですが、今の彼女は、あまりにも無防備。高高度から接近したわたくしに気付いてすらおりません。 「今なら・・ですのっ!!」 急、降下加速、射撃銃撃乱射乱射乱射。掠、掠、直撃。 雹のように突き進む、わたくしの黒。霰のように撃ちつける、マシンガンの弾丸。彼女は直前で回避行動に移り、致命傷には出来なかったものの、よろめいたその姿は弱々しい。 「もう一度でっ!!!」 重、起動。歪。 「えっ!?」 彼女のバックパックが光を放った。刹那、“世界”が戦慄いた気が、して・・・ 重圧。侵略伝播制圧圧縮、重圧重圧重圧重圧重圧、墜落。 「あぁうっ!!?」 気付いた時、目の前にあったのは地平線・・・が逆さまに。わたくしはもう空ではなく地面にいて、地面に打ち付けられていたのだと、激痛の後に知りました。それでも尚、地面は沈み、空気が縮み、視界は歪んで、わたくしの意識も遠く・・・・・・。 『勝者、フォートブラッグ、フォトン!!!』 「もう、飛ぶのは嫌ですの」 トゥールー、私の神姫は擦り切るように言う。昨日、“絶空”フォトンに負けてからずっとそう呟いている。私は、彼女の事も心配だけど、丁度作業からも手が離せないところなので、手元への注意を半分だけ、彼女の声に向ける。 「そうは言っても、あんたって飛行型でしょ? 今更怖いとか言う? って言うより、今まであんな楽しそうに飛んでたじゃない」 「でも! あんな風に“堕ちる”なんて事、今までありませんでしたから・・・。まるで、空が重くなってわたくしを拒絶したみたいに・・・」 「・・・水泳好きが溺れて水恐怖症になるみたいなものか」 まあ無理も無いかもしれない。“絶空”フォトンの特殊装備は擬似重力発生装置だったらしく、バーチャルフィールドが歪んだ用に見えた瞬間、私の見ている目の前で、トゥールーはバトルフィールドの天井から地面まで一気に墜落した。そのまま、戦闘不能で勝負はおしまい。 武器詳細を知らなかったとは言え、うかつに戦わせた私も悪かった。自責の念から、今度は完全に手を止め、彼女の方に振り向く。 「トゥールー、今回は残念だったけれど、気分を変えればまた飛ぶ事だって・・・」 「そうですの! 良く考えたらスピード感を楽しむのに高く飛ぶ必要はありませんでしたの! 思えば、今までどうしてあんなに面倒な事をしていたのでしょう! 低く飛べば高度計算も気流観測も相対距離算出もかんたんですの♪」 「・・・It’s comfy・・・」 心配して損した。 「大体、今の装備では折角マスターが作って下さっている靴が履けませんもの」 すっかり機嫌を戻した彼女が、私の手元に顔を伸ばしてくる。今私が手掛けているのは、小さなルージュ色のピンヒール。店の仕事でたまに作る、オーダーメイドの靴の要領で製作しているトゥールー用の靴だ。彼女としては、これを試作品に神姫用の靴ブランドを立ち上げたいんだと言う。 「・・・って、こんな靴でバトルはやらないでしょ普通」 「え? でも、親切な殿方が『ヒールでぐりぐりは最高の攻撃力だ』って言っておられましたよ?」 ・・・何処のマゾ野郎だか知らないけれど、またこの子に変な知識を覚えさせて。見つけたら去勢してやる。 「・・・バトルで使いたいならそれ用に作ろうか? 走りやすくスニーカー・・・は作った事無いけれど頼めば型紙とか寄越してもらえるし出来ない事も無いよ」 「そうではありませんの! 一目に触れるバトルでこそ、美しく着飾る必要があるんですの!! ホラっ、わたくしが独自に調べたアンケートでも神姫の大多数がバトル前に最も身だしなみを気にすると回答しているですの!」 小さなフリップに描いた円グラフで熱弁するトゥールー。いつもの事ながらどうやって調べているんだか。まあ武装神姫にとってバトルはダンパみたいな感覚なのかな? それなら気持ちは判るけれど。 「でも、そうなると今の作りじゃ強度が危ないな。かと言ってこれ以上コスト高になったら量産しても捌けるか・・・」 「その点は心配ありませんの! わたくしのアンケートでは神姫ユーザーのおよそ半分が神姫用靴ブランドを待ち望んでいるという結果ですの! 特に殿方には『ローファーでオーバーニーソックスもあれば絶対ハアハァ』などと言った意見もあるのですから、後の商品展開も含めて売れないなんて事はまずありません! 何より、マスターの作る靴なんですもの」 素直に喜べない。トゥールーに誉められるのはいい、他の神姫に喜ばれるのもいい、けれどそれより圧倒的多数の野郎共の情欲の道具にされると思うと、どうしても。この子がそんな事には気付きもしない分、尚更ね。 武装神姫の主要ユーザーは男性。そういうニーズがあれば、メーカーもそれに合わせて作るのは当然。神姫の「心」は自由じゃない。例えば、このトゥールーの媚びたお嬢口調。 「・・・ねえトゥールー、前から言ってるけど、その言葉遣いどうにかならない? 今時“~わ”とかすら使う女なんて居ないのに“~ですの”なんて、野郎の幻想の中にしか居ないよ」 「ああ、ですからお優しくして下さる殿方が多いですのね」 「いやそうじゃなくて・・・」 どうしても彼女には私の危惧が伝わらない。只でさえこの子は限定カラーで目を引くんだから、その辺のキモオタ野郎共に拉致される可能性は低くないのに、何度言ってもトゥールーは男を警戒しない。これも、プログラミングなのだろうか。 「マスターは、殿方が嫌いなんですの? それでは恋愛も出来ませんわ」 「欲情だけで動いている連中とは死んでも嫌だね」 「ですけれど、男も女も同じ人間ではありませんの?」 ひたすらに無垢に、疑問の視線が返って来る。それは確かに天使の笑み。けれど邪な心じゃ触れられないとか言う便利な機能は付いてないんだから、もう少し自覚してもらわないと困る。声を整えて、少し強い口調で忠告を始める。 「・・・いい、トゥールー。男と女ってのはね、同じ人間って言ってもevenじゃないの。言わば足と靴なの! 触れ合って同じ感覚を共有する事があったって、本質的には別の存在なんだよ」 「靴が女性で、足が殿方ですの?」 「逆っ!! ・・・男ってのはね、量産された幻想の足型で女を測って、それに合わせさせようとするけれど、結局実際に足を動かして疲れるのは女ばっかりなの! 子孫を残すのも、家庭を支えるのも、結局女が全部やるんだから。男は靴底すり減らして給料稼ぐ位しか出来ないのに、女が下手に出る必要は全く無いの!! 靴が足を選ぶ道理なんて無いでしょ?」 「ですけれど、顔をオーダーメイドするのは女ばかりではないのですの?」 思いがけず反論を飛ばすトゥールー。表情は、穏やかなままで。 「・・・あれはエステの一種と思いなさい。ともかくね、生身と人工物程違いがあるんだから相容れなくて当然、無理して合わせて靴擦れして痛い思いするなんて馬鹿みたいじゃない」 「神姫と靴でしたら、どちらも人工物ですの。丁度いいのではありません?」 再度、彼女からの刺。思わず「さくっ!」と擬音語を叫びたい程に突き刺さる。そこまで、男を擁護したいの? それが、貴女の意思だと言うの? ・・・そうかもしれない。確かに相容れないとしても、歩み寄りたいと思う、それも男と女の本質かもしれない。逆に諭されたのか、私は。 「・・・ごめん、私も言いすぎた。そうだね、私がどう思っているにしろ、貴女が男とどう付き合うかなんて貴女自身が決める事であって・・・」 「それに、神姫なら足のサイズが皆同じですから、その分バリエーションにこだわれますし、お友達と履き替えっこしたりや、部屋用、お出かけ用、バトル用なんて風に何足も揃えても履けなくならないので困りませんの。あ、もし飽きて捨ててしまっても、神姫の使ったものなら別に汚くはありませんから中古価値も高いですの」 「・・・why?」 ちょっと待って、今、物凄い事を口走ったよ、この子。でももしかして靴の例えを神姫用靴の話と取り違えたのかも・・・でも話の流れからすると間違えるとも思えないし。それとも、トゥールーって無駄にマイペースな所があるから、今のも、今までの反論も他意のない思いつき? いやそれにしても・・・。 「ねえマスター、そう言えば、靴下は何に例えるんですの?」 「・・・結婚かな。摩擦を抑えるって意味で」 気にしないことにしよう。うん、それがいい、そうしよう(というか考えると怖い) 「あ、そう言えば。トゥールーはもう飛びたくないんでしょ? でもスピード感は欲しいと」 「でも、脚部換装して地上戦というのも、結局マスターの靴が履けないから嫌ですの」 「じゃあさ、面白い事考えたんだ。これなら靴は何履いてもいいし、スピード感はあるし、何よりit’s stylish!」 「それは、何ですの・・?」 「それはね・・・」 オムニバスなのに続く!!(え~) 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2150.html
ウサギのナミダ ACT 1-25 ◆ 高村がCSCをセットし、目覚めたその日からすでに、雪華の目標はバトルロンドで頂点に立つことだった。 高村自身もバトルロンドに参戦するつもりでいた。 しかも相当本気でやるつもりでいたから、有名な神姫ショップにフルチューンを依頼し、素体ではほぼ最高レベルのパフォーマンスが出せるアーンヴァルを手にした。 素体が神姫の性格に影響したのか、CSCの組み合わせの問題なのかはわからない。 目覚めた雪華は誇り高く、バトルに勝利することを一番とした。 ただし、卑怯な振る舞いはしない。あくまで正々堂々、実力で勝つ。それが雪華の誇りであった。 しかし、それは茨の道だ。どんな神姫でも不得手な相手はいる。卑怯な戦い方をする奴もいる。真っ向勝負で勝とうというのは、なかなか難しい。 それでも、雪華は卑怯な真似は一切しなかった。 高村が感心するのは、雪華が努力を惜しまない姿勢だった。 フルチューンしたボディなら、性能差で渡り合うことができる。武装を選べば、並の神姫に負けることはない。 にもかかわらず、雪華はそれをよしとしなかった。 とにかく基本動作の反復練習を飽きることなく、今も続けている。 時には、近接武器だけ、遠距離狙撃用ライフルだけでバトルに出て、納得いくまで実戦経験を積むこともあった。 才能と努力。その二つが結実して、類稀な強さを手にした。 そして、どんな相手とでも真っ向勝負で勝利を収めてきた。 しかし。 いつの頃からだろう。 雪華は自らの成長に限界を感じていた。 雪華は大会に出て頂点に立つことを望んでいる。 故に、戦う相手は大会出場を目的とした神姫が多くなる。 だが、大会で勝てる神姫というのは、パターンが限られて似通ってくるのだ。 戦闘がマンネリ化してきた、とでも言おうか。 対戦するどの相手も、どこかで戦ったことがある武装神姫ばかりに見えるようになった。 もちろん、強い神姫もいる。 だが、想定の範囲内での攻撃しかしてこない。 限られた範囲での技を極め、純度を増す、というのも一つの強さなのだろう。 しかし、雪華はその範囲内での強さでは、もう限界を感じていた。 自分はこれ以上強くなれないのか。 そう思ったとき、雪華は焦りさえ覚えた。 彼女は頂点を極めるため、強くならなければならない。 どんな攻防にも勝てる強さを身につけなければ。 雪華はそれを戦闘での「引き出し」の多さに求めた。 それは大会出場の神姫とばかり対戦していては得られないもの。 大会にエントリーしていなくても、名の通った武装神姫はたくさんいる。 そうした神姫を求めて、雪華と高村はあちこちの神姫センターやゲームセンターに足を運んだ。 まるで武者修行だ。 だが、その武者修行はあたりだった。 思いもよらない変わり種の、強い神姫たちと出会い、対戦できた。 その対戦に勝つ度に、自分が少しづつ強くなっていることを実感する。 そして今日もまた、目の前に特別な神姫がいる。 ティアとの対戦は、今の雪華にとって、どんなことよりも優先されるべきことだった。 ◆ 「マスター。『レクイエム』の使用許可を」 「……いや、雪華。相手はもう動けそうにもない。『レクイエム』を撃つまでもないじゃないか」 マスターの逡巡する声に、雪華は厳かに告げる。 「いいえ。『ハイスピードバニー』は強敵です。ならば、手抜きは礼を失するというもの。我が最大の攻撃を持って、幕引きとしたく思います」 そう、雪華はティアを「強敵」と認識していた。 大会で出会った多くの神姫でも、ここまで食い下がった相手はほとんどいない。 武装がオリジナルで、見たことのない戦闘スタイルを駆使し、ノーデーターでの対戦であり、相手の得意なフィールドであることを差し引いても、これほど噛み合う対戦になるとは思いもしなかった。 雪華の胸は昂揚で沸き立っていた。 強敵と戦えることの喜び。そして、その戦いに勝利することで、私はまた一つ強くなる。 マスターの、あきらめたようなため息が、聴覚センサーに届く。 「……わかった。追加パーツ転送。『レクイエム』使用許可」 高村の声と共に、サイドボードから追加のパーツが転送される。 それと同時に、黄金の錫杖が変形する。 ビームガンを中心に再構成された錫杖は、航空機を思わせるシルエットに変わる。 追加のパーツの支持用のハンドルがドッキングする。 雪華の前に現れたのは、高出力のビームキャノンだった。 ノーマルのアーンヴァル・タイプとは異なる、鳥状の翼が大きく開く。 翼の縁が金色にまばゆく輝き始めた。 エネルギーの奔流が翼を伝い、雪華を通じて、ビームキャノン『レクイエム』に流れ込む。 溢れ出るエネルギーが光の粒子となって、雪華の周りを舞っている。 まるで高位の天使が光臨する様のように、観客の目に映った。 ■ 痛みは、わたしにとって、諦めを促す信号だ。 お店にいたとき、痛みや苦しみを受けると、「諦める」ことでそれらを適当に処理し、やりすごしてきた。 そうしなければ、耐えることができなかった、あそこでは。 落下の衝撃で体中がきしむ。 腹部には熱い痛みがある。雪華さんに撃たれたのだ。 わたしはお腹を抱えてうずくまり、その痛みに耐える。 ……もう、諦めてもいいですか? わたしは必死に戦ったけれど。 もう、立ち上がれません。 だって、痛いんです。 とてもとても痛いんです、体中が痛いんです。 痛くて痛くて痛くて泣いてしまいそうです。 だから、諦めてしまえば……。 心の中から、別のわたしが声を上げる。 ……何を? 何を諦めるというの。 この試合……? 負けてもいいでしょう? だって相手は全国大会の優勝候補なんだもの。 わたしはこんなに痛い思いをしているんだから……。 別のわたしは、何も言わず、ある画像を認識させた。 閉じたわたしの瞼に映る人の顔。 ……マスター。 わたしは、はっとなり、瞳を見開く。 思い出す。 あの時の、マスターの冷たい眼差しを。 マスターの右手に巻かれた包帯を。 マスターが手を差し出したときの、震えた声を。 ネットの掲示板に書かれた悪意の言葉を読んだときの気持ちを。 あのときの、耐え難い、心の痛みを。 いいはずない。 負けていいはずない。 諦めていいはずがない! わたしは拳を握り、地面の砂をぎゅっと掴んだ。 痛い? 何が? 撃たれたお腹が? 打ちつけられた身体が? こんなもの。 あの時の心の痛みに比べれば。 どれほどのものだっていうの!! そう、わたしは誓った。 すべてを賭けて、マスターに尽くすと。 マスターがわたしにしてくれたように、わたしもマスターのためにすべてを賭けると。 まだわたしは、このバトルですべてを賭けてはいない。 歯を食いしばる。 両腕をつっぱると、上半身をわずかに持ち上げた。 わたしはまだ走れる。 わたしにはまだ技がある。 マスターにも知らせていない、とっておきの技。 いま、ここで使う。 マスターに勝利を捧げるために。 ◆ 雪華はティアに照準を定める。 ティアは未だ動かない。うずくまったままだ。 先日の全国大会地区予選でも、使用することのなかった最大の技。 今こそ放とう。 ここで出会えた未知の強敵に、最大の敬意を払って。 「レクイエム……シュートッ!!」 雪華の叫びとともに、ビームキャノン『レクイエム』から虹色の光芒が放たれた。 埃にまみれたストリートを薙ぎ払う。 次の瞬間、メインストリートに光の絨毯が敷き詰められた。 放出されたエネルギーの光芒は、地面に着弾すると、無数の光弾になって炸裂した。 弾け飛ぶ無数の小さな光弾は、触れたものに確実な破壊をもたらす。 炸裂音が幾重にも重なり、轟音となって、廃墟の街に響き渡る。 はじけた光弾は、さらに細かい粒子となり、一瞬舞い踊る。 それによって、薙ぎ払われた攻撃範囲内のストリートは、光で膨れ上がった。 その下にあるものは完全なる破壊。 まさに鎮魂歌……その名に恥じない、美しくも無慈悲な必殺攻撃。 あまりの攻撃の美しさに、ギャラリーから感嘆のため息が漏れた。 虎実はきつく目を閉じて、観戦用の大型ディスプレイから顔を背けた。 「あんなの……かわせっこねぇ……」 ミスティは手で口元を押さえながら呟く。 「そこまで……する必要が……あるっていうの、クイーン……」 菜々子と大城は、厳しい表情のまま、大型ディスプレイから目が離せないでいる。 四人の少女たちも、口元を押さえて見入っている。 三強でさえ、呆けた表情でディスプレイを見入るばかりだ。 誰もが雪華の勝利を確信していた。 それは、雪華本人も、マスターである高村でさえも例外ではなかった。 □ そのとき、状況を正しく理解できていたのは、ティア本人だけであったかもしれない。 俺は信じられない思いでモバイルPCの画面を凝視していた。 自分を取り巻くギャラリーの気配さえ遠く感じる。 「……ティア……おまえ……」 ティアをモニターしているモバイルPCには、すべて限界を突破した数値が映し出され、画面は真っ赤に染まっていた。 そして、いまも刻々と数値は上昇を続けている。 ◆ 地表を覆っていた光の靄が晴れる。 風が砂煙を吹き払っていく。 後に残されたのは破壊の爪痕。 攻撃範囲内にあったものは、古ぼけた建物であれ、乾いたアスファルトであれ、何もかもが細かな瓦礫と化している。 『アーンヴァル・クイーン』雪華は、ゆっくりと地表に下降していく。 『レクイエム』は、彼女のエネルギーを大半使用する、まさに最終の必殺技だ。 アーンヴァルの飛行能力も、エネルギー低下の影響を否めない。 だからこそ、乱発できる技ではないのだ。 勝利を確実にするための必殺攻撃……それが『レクイエム』だった。 降下しながら、雪華は勝利を確認するため、自らの破壊の跡に目を向ける。 ……だがしかし、そこにティアの残骸は見受けられなかった。 雪華は怪訝な顔をした。 身動きの取れないティアが、あの攻撃をかわしたとは思えない。 瓦礫の下に埋まってしまったのだろうか? それもあるかもしれない。 だが、おかしい。 それならばなぜ、ジャッジAIから勝利のコールがなされない? あまりに低い一つの可能性に、雪華の思考が至るより早く。 「雪華、上だっ!!」 マスターの短い注意を、雪華が認識するよりも早く。 ティアの鋭い膝蹴りが、雪華の背中に降ってきた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/269.html
第2話 好きなものは? それまで武装神姫というものを知らなかった俺は、あちこち調べてみた。 神姫にも好き嫌いがあり、バトルしたがるのとか、服で着飾りたいのとかが居ること。 それらの性格の違いが、本体に登録されている基本性格とCSCの組み合わせで生まれるということ。 驚いたことに、食事もできるらしいということ。 そして、しばらくたったある日のこと。 その日、俺は予定よりも早く帰ってこれた。 手にはアールが好きだと言った食べ物の入った袋がある。 自室の前に立つと、中から音楽が流れているのが聞こえてくる。 アールが音楽が好きなことが分かり、プレイヤー類は自由に使っていいと言ってある。 せっかく楽しんでいるアールを邪魔しないように、ドアをそっと開けて中に入る。 俺の机の方に目をやると、そこで釘付けになった。 歌を聴いていると思っていたのだが、現実は予想のはるか上だった。 プレイヤーから流れる歌に合わせてを口ずさみ、器用に踊るアールの姿がそこにあった。 金色の髪をなびかせ、腰をぷりぷり振って手足でポーズを取って踊るアールに俺は見入ってしまった。 (可愛いもんだな) そう思っていると、アールがターンをしてこちら側を向く。 「あ」 「あ」 アールと俺の目が合った。 すると、アールの顔がみるみる赤くなり、小刻みに震え出した。 「み、みてたんですか?……」 「あ~……うん、可愛かったよ」 にっこりと微笑んでやると、アールの目に涙がたまりだす。 俺は涙を流す技術に感心すると、アールは側に置いてあったレーザーキャノンを持ちこっちを涙目で睨む。 「マスターのばかぁぁぁぁ!!」 そう叫ぶと、LC3レーザーライフルを乱射してきた。 神姫用に作られた武器類は、人間に致命傷を与えることは無いといっても、結構痛い。 「おい、こら。やめろ」 レーザーライフルを取り上げ、アールを握って暴れないようにする。 「ふぇぇぇぇん」 俺の手の中で顔を両手で覆って泣いている。 「落ち着けって、泣くなよ」 反対の手でよしよしと頭を撫でてやると、ゆっくり泣き止んできた。 「落ち着いたようだな」 撫でるのをやめて、机に座らせてもアールは顔を覆ったままだった。 「いつも踊ってるのか?」 アールに問い掛けると、ビクンとなった。 「ああ~、無理に言わなくてもいいよ」 「……マスターに」 「うん?」 手で覆いながらもアールはゆっくりと話し始めた。 「マスターに見られないように、見られたくなかったから……帰ってくる時間には終わらせてました」 「どうして? アールの踊り、可愛かったよ。俺は見てみたいな」 「恥ずかしいんです!」 アールは覆っていた手をどけてこっちを見たが、顔は真っ赤のままだ。 「だって……こんなのが好きだなんて」 「いいんじゃないか? それは、アールがアールだっていう証拠なんだし」 「え?」 「神姫にもいろいろ好みがあるってことさ。だから見せて欲しいな」 「マスターは、わたしを嫌いになりませんか?」 少しおびえた表情で見つめているアールの頭をなでた。 「どうしてそう思う?」 「だって……」 「むしろ、もっと好きになったよ」 「マスター」 今度は別の意味で顔を赤くするアール。 「しょ、しょうがないですね。マスターがそう言うならみせてあげます」 顔を真っ赤にしてそういうアールをにっこり笑って答えた。 「ところで、さっきの歌はなんだ?」 「はい、私の好きなたいやきの歌です」 「そ、そうか……たいやき買ってきたから一緒に食べよう」 袋を持ち上げてアールに見せる。 「はい!」 輝くような笑顔でアールが返事した。 俺は存分にアールの踊りをし、買ってきたたいやきを二人で食べた。 たいやきを食べていると、突然アールの顔が般若のようになり、俺の方を向く。 「マスター! これ、尻尾まであんこが入っていません!」 「え?」 「マスター、いいですか? たいやきというのはですね…………」 このあと、たいやきについて延々とお説教されるとこになりました。 アールの新たな一面がみえたと同時にちゃんと選んでたいやきを買うことを誓いました。 TOPへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1265.html
花は、散り逝く瞬間が最も美しいという。 例え我が家の燃える姿であろうと、巨大な炎に人は惹かれる。 兵器は、破壊される瞬間、最も誇らしいと謳われる。 死に幻想を抱く人間は尽きない。 崩壊、それは美しきもの。 降雨、流雨、冷雨、泪雨。 「しゅーこちゃん、だって、つーが大好きだと、みんな、壊ちゃうですよ? それなら、つーが壊れた方が、まだ・・・」 「ツクハっ!!」 どうしてこうなる?誰が悪い?何が悪い? 泣きそうに問いかけても、誰も答えない。雨がツクハを虚ろにしていく― 第2章 月下美人 「・・秋子、それでさ、その変な神姫、一昨日も昨日も夕飯にまで居座ってさ、人の作ったご飯に文句ばっか言うクセに殆ど食べないし」 「神無・・、神姫とは言え、そんな怪しい人をほいほい家に上げていいの?」 「・・・いや、そうなんだけどぉ、番犬代わりのロウが懐いちゃってるもんだから追い出すに追い出せなくて」 神無の話を要約すると、一昨日の騒ぎの後、家に帰るとその見知らぬ神姫が主人も連れず我が物顔で居座っていたという事らしい。しかもそれから毎日来ているという。 「それで、結局その神姫は何者なの?」 「さあ? ロウが言うには“先生”なんだって。でも何教わっているかは秘密だっ!って言って教えてくんないし。あいつ最近ナマイキなんだから」 「じゃあ、誰の神姫なのかも判らないの?」 「あ、それは八木内科だって」 「隣町の? そういえば、最近賑やからしいって聞いたけれど・・その神姫の事かな?」 「多分」 兎にも角にも、私の親友はまた面倒事を抱え込んでしまったみたいだ。 「ねえ、ところでさ、この前言ってた秋子の神姫ってなんて名前なの?」 「何? 騒がれたら、神無も武装神姫に興味が沸いたの?」 「いや、そういう訳じゃないよ。ただ秋子が連れてる娘ってのが、気になっただけ」 「・・・まあ、いいわ。でも、少し覚悟してね」 「へ?」 放課後の教室には静かだった。それでも少し前までは、神無に神姫の事を聞きに来た男子達が居たけれど、あまりのしつこさに激怒した神無に気圧され、今はもう誰も残っていない。一応もう一度周囲を確認して、鞄に手をかける。 「ツクハ、起きて」 「・・ふわぁ~。あれ? しゅーこちゃん、もう家ですかぁ? それともまたあの犬ヤロー?」 鞄から這い出る小さな影、眠そうに目を擦る。白緑色の髪、緑系で統一されたボディカラーのジュビジータイプ。それが私の神姫、ツクハ。 「え・・・これが秋子の神姫? っていうか真面目な秋子が学校にこんなの持ち込んでたなんて・・・」 「事情で、家に置いていたくないの。ツクハ、ここはまだ学校。友達が貴女に会いたいって言うから起こしたの」 「え!? 友達って、もしかしてカンナちゃん!?」 「あれ? アタシの名前知っているの?」 「うん! しゅーこちゃんの友達で、しかも美少女の名前、忘れるわけ無いですよ! 初めまして! つーはツクハです! お友達になって欲しいです♪ てゆーかお友達から初めてねです♪」 「え? あの・・うんまあ」 「こら、ツクハ。神無が困っているからそれ位にしなさい。神無、これが言い辛かったから隠していたのだけど・・・」 ツクハは限定品カラーらしいけれど、普通の神姫と変わらない。ただ、一つを覗いて。それは・・・ 「ツクハって、女の子好きなの、ものすごく」 「れ、れずっこ!?」 「うんっ♪ あ、でもつーのはプラトニックだから安心です♪」 「いやどう安心なの、それ」 ツクハの“左手”に振り回された神無の右人差し指が、困惑して語る。無理もない。私もツクハには振り回されっぱなしなのだから。 「あれ? もしかしてそれが法善寺の神姫? 学校に持ってくるなんて勇気ある!」 「わっ!? いつの間にいたの!?」 「あ、相原君・・・」 突然飛び込んできた笑顔。動揺してしまう。しどろもどろに言葉を見つけられずに居ると、急にツクハが躍り出て、“右手”で彼を指差す。 「あ~!! もしかしてうちのしゅーこちゃんをたぶらかそってゆーのです!? しゅーこちゃんは渡さないですよ!」 「ちょ・・ちょっとツクハ!」 「な、なんか意外に激しい性格の神姫だな。俺のフォトンと気が合えばいいけど」 食いかかるツクハに、意外にも怯まず、相原君が携帯の画像を見せる。映っていたのはフォートブラッグタイプ。・・と、一瞬前まで私の前で立ちはだかっていたツクハがすぐさま画面にかぶりつき、画像を覆い隠してしまう。現金ね。 「え!? この子がアンタの神姫ですか!? かーわい~♪」 「ん? 俺のフォトンを気に入ってくれたのか?」 「フォトンちゃんかあ・・。まあ、しょうがないですねえ、ちょっと位なら、しゅーこちゃんとのオツキアイ認めてあげてもいいですよ」 「ちょっ!? ツクハっ!!」 “お付き合い”の言葉に、声を張り上げてしまう。すぐに恥ずかしくて相原君から目を背ける。きっと今顔が強張っている。変な子と思われた。 「本当か! フォトンも喜ぶよ!!」 でも、相原君はその言葉の意味に気づかなかったらしい。・・・でも私は・・・。 「それじゃあさ、何時法善寺の家に行こう? 家近いの?」 「いや、あんまり・・・」 動悸が止まらない。 「じゃあ休みのほうがいいよな。今週末空いてる?」 「・・ええ、でも、私の家、散らかっているし親もうるさいから・・・」 上手く話せない。 「あ、じゃあ外で会う方がいい? 隣町のヒメガミ神姫センターとか。場所判るだろ?」 「・・・うん」 目を合わせられない。 「じゃ、日曜な。時間は後で教える。それじゃ!」 「あ、ちょっと相原君! 秋子がツクハちゃん持ってきてるのは内緒だよ! 事情が・・」 「判ってるって豊島。じゃあまた明日な!」 「言うだけ言って帰っちゃったよ・・・。でも相原君の方もさ~、秋子に気があるよね。アタシも神姫持ってるって言ったのに秋子しか呼ばないし」 「うんうん。でもいきなりデートなんてフトドキモノですよ!!」 「デートだなんて、そんな・・・」 彼の笑顔が焼きついて、まだ、頬が熱い。 帰宅するまでの間中、胸のざわめき治まらない。ツクハはまた寝かせておいて良かった。起きていたら「まだしゅーこちゃんがふやけてるです~!! あんのスケコマシ~!!!」なんて五月蝿そうだから。 ・・・そう思っている内にもう自宅前。惚けていた割にバスは乗り間違えなかったようだ。我ながら可愛げがない。そうだ、神無やツクハはあんな事を言っていても、相原君はきっとそうは思っていない。だって私に可愛い部分なんて無い。目が悪いからいつもしかめっ面をしているし、最近笑った覚えも無い。それなら、ずっと神無の方が可愛い。だから、そんな事は無い。ただ神姫に興味があるだけ。 「可愛くなんて・・・」 「秋子、遅かったな」 身の毛が弥立った。玄関の先に居た、悪夢に。 掻き切られ気味に取り戻した理性が、声の主を凝視する。醜い、醜い、醜い、男。私の兄、法善寺冬次。どうして・・こんな時間に家に居る? 「仕事が、早く上がった。それに、おまえに用があったからな。また、神姫が1“台”調子悪くなったんだ。貸せよ、お前の神姫」 「・・・もうツクハは戦わせない、絶対に」 「はあ? 戦わせるのが武装神姫の使い方だろ? そいつが居れば、負けは無いんだ、貸せ。今週の日曜だ」 低く崩れた声が強制する。けれど絶対に屈しはしない。日曜は相原君との約束の日。それだけじゃない。この男が私とツクハにしてきた事を思えば、従う理由はひとつも無い。 この男はツクハを捨てた、ひどくモノのように。けれど私が彼女を拾えば、卑しい強欲で返せと叫ぶ。それだけでは済まなかった。私がツクハを置き学校に行っている間に、この男はツクハを連れ去って、そして戦いを強制した、何度も、何度も。きっと私に何かすると脅迫したのだろう。昔、私にしたのと同じに。私がその事実に気付いた時、彼女が右腕を失って帰ってきたその時には、何年かぶりに嗚咽した。だから・・・ 「お前の言う事なんて、聞けないっ!!」 ツクハの入った鞄を抱えて階段を駆け上がる。鍵は三重に閉めて、そして、力が抜けて蹲る。 「ううっ・・・」 出来れば、この身の全ての血を抜いて、取り替えて、あれと他人になりたかった。 「それは尾行ね絶対。初デートなんて面白・・重大なイベント、影ながら助けてあげるのが親友ってモノじゃない? あ、このフライドチキン、下ごしらえ足りないわね。ハーブ少し刷り込むだけで、違うものよ?」 「むぐむぐむぐ」 「・・・アニーちゃん、絶対面白がってるでしょ。それから味に文句があるなら手伝ってよ、小食のただ飯食らいサン」 何故かすっかり定着しちゃった、この銀髪中性神姫(オカマとは違うんだって)を含めた我が豊島家の夕食。ロウと2人よりは間が持つとは言え、毎回ヒトの味付けにとやかく言われるのは的確なだけに結構ストレス。・・と、それはともかく。 「そんなにしたいなら、アニーちゃんがすればいいでしょ、尾行」 「う~ん、そうしたい所だけど、場所が神姫センターじゃ無理ねえ」 「どうして? 神姫センターなら神姫が居たって平気じゃないの?」 「こっちには、こっちの事情があるのよ。金、土・・あと丸2日じゃロウの【ジャミングパック】も出来上がらないし、神無ちゃんしか出来ないのよ。準備はしてあげるから」 「むぐむぐむぐ」 よく判らないまま言いくるめられてしまう。そりゃあまあ、アタシだって秋子と相原君がどうなるのかは知りたい。秋子って男の子にはアタシ以上に免疫少なそうだし、心配な気持ちも確かにある。 「・・・まあ、日曜は晴れるし暇だから、いっかぁ・・・」 「むぐ・・ごくん。カンナっ! にくっ! おかわり!!」 「もう無い!」 その時は、漠然とした気持ちだけで、結果なんて見えてなかった。想像も出来なかった。 目次へ